「石巻でこんな活動しています」と話すと、「え?仮設住宅ってまだあるの?」と言われることがあります。

「震災から6年半も経つのに、どうして再建できないんだろう?」と思われるかも知れません。
もしかしたら「今も仮設住宅で暮らしている人って、甘えてるんじゃないの?」「仮設住宅って家賃がタダだから、居座っているんでしょ?」と思う方もいるかも知れません(石巻の人でもこう考えている人は多くいます)。

もちろん再建しようと思えばできるのに、していない人もゼロではないです(それぞれ理由はありますが)。
仮設住宅は家賃が無料なので、それに甘えてしまっている人もいます。

でも、私たちが出会い、お話しする方のほとんどは「自立したい」「早く仮設住宅を出たい」と考えている方々です。

では、どうしてそれが出来ないか。

ひとつは復興公営住宅がまだ建たないからです。
石巻の沿岸部は震災によって大きな被害を受け、一部は災害危険区域に指定されています。
災害危険区域には住居を建設することができません。
その場合、防災集団移転といって、集落ごと内陸や高台に移転します。
石巻の場合は土地が足りないので、山を切り崩すか、田んぼなどを埋め立てるかして土地を造成しています。
集落の将来を決める合意形成にも時間が掛かりましたし、土地の取得にも時間がかかりました。
そして今、急ピッチで工事が進められていますが、まだ完了していません。
というわけで、今も仮設住宅に暮らしている方の中には、復興公営住宅や防災集団移転地を待っている方が多くいます。

もうひとつの理由は、さまざまな理由で、復興公営住宅に入る権限のない方がいるからです。
復興公営住宅は「災害により住宅を滅失し、自力での住宅再建ができない方のための公的な賃貸住宅」。そして、1世帯1戸と決められています。
震災前、借家に住んでいて、被災して仮設住宅に移り、その間に借家の大家さんがその住宅を修繕してしまったら、それは「滅失」に当たりません。
大家さんは震災前と同じ人を住まわせる義務もない(通常は不動産屋さんが間に入っているので、同じ方を住まわせるのは不可能)ので、別な方が入ってしまったりします。
リフォームをしているので、家賃も震災前より上がっている場合がほとんどですし、住んでいた方も震災前より収入が下がっている場合が多いので、やっぱり同じ部屋には住めません(注:最近このルールは少し緩和されてきています)。

また「1世帯1戸ルール」があるため、震災後に離婚(タイミングによる)や別居をしている場合、また震災前は2世帯(息子夫婦と同居など)で住んでいて震災後に世帯分離をした場合、復興公営住宅に入れるのはどちらか片方だけです。

また、防災集団移転で移転できるのは「住居」だけです。
家業として代々お寺や神社を守ってきた方々は、土地もない中、自力でお寺や神社と自宅を再建しなくてはなりません。
地域に密着していなければ意味がない業種ですから、再建先を見つけるのは簡単ではありません。

「震災前も働いて家賃やローンを払ってきたんだから、がんばったら自立できるんじゃないの?」と思われるかも知れません。
でも、たとえば震災後に人工透析になったら? ガンが見つかったら??

私の知っている方は、もともと糖尿を患っていて食事制限があったそうですが、避難所にいた2か月間、その食事制限が守れず、一気に悪化してあっという間に人工透析になってしまったそうです。
週3日、透析に通う生活では、まともな収入は望めません。

また別の方は震災後にガンが見つかり、手術しましたが、再発して仕事を諦めました。
職場の人も「戻ってこい」と言ってくれて、本人も働く意思はあるのですが、体調の悪い日も多く、「いつまた入退院を繰り返すか分からないと、かえって迷惑かけるから」とおっしゃっていました。

それって「本人のせい」でしょうか? 「甘えている」のでしょうか??
同じ被災者なのに、復興公営住宅に入れる人と入れない人がいる。
そこに不公平感を感じてしまうのも、私は分かるような気がします。
もちろん、公的な資金を使ってつくるものなので入居に条件があるのは当然ですが、制度の狭間で救われずに苦しんでいる人がいることも知って欲しいと思います。

先日NHKの方から依頼を受けて、そんな「自立できない」仮設住宅の住民の方を何人かご紹介しました。
取材風景は見ていないので、どんな番組になっているのか分かりませんが、「こんな問題もあるんだ」ということを知って欲しいと思います。

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「再建遠のく“働く世代”~震災6年半 いま何が~」
【日時】 9月8日(金) 午後7時30分 東北
【番組】 NHK「クローズアップ東北

石巻市では、9月末をめどに、市内56カ所の仮設住宅の閉鎖を決め、仮設解消に向けて一気に動き出そうとしている。市が一軒一軒訪問し、再建の見通しを調査したところ、「退去する」としながら、実際には再建方法が決まらず、仮設を出られない世帯が少なくない実態が見えてきた。中でも、40代~50代の“働く世代”が、深刻な状況に陥っている。“働く世代”の実態と背景に迫り、いま求められる支援を専門家とともに考える。