「わたしは出身は尾崎(おのさき)なんだけっど、
尾崎は後ろに山背負ってるからさぁ。
わたしは山の上から津波来るの一部始終見てましたよ。
親父の実家が流されていくのも。

でも、わたしらは人的被害はなかったから。
知り合いは、孫が大川小で、お孫さん三人亡くしてね。
同じ団地に住んでるんだけっど、
会うと悲しい話ばかりになるから。
だから顔合わせないようにしてるのさ。

いつまでも、傷は癒えないというか、
悲しみは消えないというか。

でも、これは生まれる前から敷かれてたレールなのかなって。
ほら、運命は変えられないから。

私はもう車の免許も返納して、
どこにも行かれないから、
山で木の枝だの、竹だの、実だの拾ってきて、
こうして飾りもの作ったりするのさ。
その一時がね、いろんなこと忘れられるっていうか。

あんた、きずな新聞の人?もしかして編集長さん?
きずな新聞ね、いつも楽しみにしてるんだよ。心に染みること書かってる(書いてある)よねぇ。
編集長さん、どんな人かなぁって思ってたんだけっど、
アンタだったんだねぇ。

これ、記念にやっから。
わたしらは、頑張って生きてるからさぁ」

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